3rd Northwest Conference on Japanese Pedagogy

Program

The Conference Theme: “Content Based Language Instruction (CBLI): Implementation and Effectiveness 「CBLI:実践と効果」

Saturday, 12 May

8:30-9:00 Registration and Check-in

 

9:00-9:15 Opening Remarks

 

9:15-12:15 Keynote Speech / Workshop:

“Content Based Language Instruction (CBLI): Curriculum Design and Measurement of the Effectiveness”

Professor Masako Douglas

California State University Long Beach

12:15-1:15 Lunch Break

 

1:15-1:55 Dramatic Community @ Kinosaki — A Field School for development of Japanese language and intercultural competencies

ドラマティックコミュニティ@城崎—インターカルチュラル能力を高める滞在型日本語講座

Hiroko Noro

University of Victoria

 

2:00-2:40 Fostering Learner Autonomy Beyond Classroom and Border: Global Collaborative Language Learning

国境を超えて、学習者の自主性を育てる: グローバル・コラボレーティブ言語学習

Yukiko Omata

University of Oregon

 

2:40-2:55 Break

 

2:55-3:35 Learning Japanese through films as “Project-based Language Learning” approach

「作業中心の学習」で取り組む映像作品利用の日本語教育

Naoko Takei

Simon Fraser University

 

3:40-4:20 An Analysis of Japanese Language Learner’s Filler

「ええと」「あのう」を使いたい理由
Yasuko Matsumoto

Harvard University

 

 

Sunday, 13 May

8:30-10:00 Breakfast Reception

 

10:00-10:40 An individualized, content-based approach to college-level advanced Japanese

大学上級レベルでのCBIを使った個別学習の試み

Amy Snyder Ohta

University of Washington

 

10:45-11:25 Learning Japanese through projects: Curriculum revision of the Second-Year Japanese courses

プロジェクトを通しての言語学習――日本語二年生におけるプログラム改訂の試み

Kyoko Chen Sato; Mayumi Mochizuki Mckee; Minori Inada; Rie Maruyama

University of California, San Diego

 

11:30-12:10 Peer Feedback on Oral Proficiency Interview using an Authentic Japanese Job Interview Setting

口頭試験「日本の就職面接」のためのピア・フィードバック

Misuzu Kazama

University of British Columbia

 

12:10-12:30 Closing Remarks

 

 


Abstracts

Dramatic Community @ Kinosaki — A Field School for development of Japanese language and intercultural competencies

ドラマティックコミュニティ@城崎—インターカルチュラル能力を高める滞在型日本語講座

Hiroko Noro

University of Victoria

本発表の目的は、2016年、2017年にカナダ、ビクトリア大学太平洋アジア学科より開講され兵庫県豊岡市城崎で行われた体験型日本語学習講座の実践報告及びその教育的意義を考察することにある。本講座は、 温泉町で有名な城崎という比較的小さいコミュニティで開講された。 これは兵庫県豊岡市と本学との共催で 城崎国際アートセンターという兵庫県豊岡市が所有、管理する公的施設が我々のベースとなった。 通常日本語講座は 日本語講座と日本文化講座が別々の時間帯で開講されるケースが多く、また日本文化講座はしばしば英語による講義という形が取られるが、本講座では日本語を教室外で地元コミュニティの人々と接しながら、日本文化およびインターカルチュラル能力も体験を通して学んでいくというホリスティックな学習形態が取られた。 本発表タイトルの「ドラマティックコミュニティ」には、二つの意味が込められている。まず学習者が振り返りをスキットで表現するなどの学習方法という意味でドラマティックという語が使われている。さらに城崎という小さなコミュニティで、言語・文化的背景を異にする学習者と地元の人々が出会うことは、 お互いが知らずに持っていた先入観を覆す発見があるかもしれないという意味でドラマティックという表現を用いた。本発表では、この日本語講座の教育的アプローチの核となっているインターカルチュラルな日本語教育について考察し、次に本講座の背景及び講座の実践について、特に演劇的アプローチを用いた学習実践について報告する。

 

Fostering Learner Autonomy Beyond Classroom and Border: Global Collaborative Language Learning

国境を超えて、学習者の自主性を育てる:グローバル・コラボレーティブ言語学習

Yukiko Omata

University of Oregon

このプロジェクトではデジタル・テクノロジーを用いたアメリカでの日本語教育における中級レベルの学習者に対する、新しいタイプの日本語コースと指導のあり方を提案する。このコースの特色は学習者中心型の共同学習を取り入れ、教室内外での自主性を育てることに力を注ぐことにある。デジタル・テクノロジーは現在の語学習得におき多くの利点をもたらしているが、中級レベルの日本語学習者は知識の内部移行(インターナリゼーション)、また談話力、書く能力においていまだに課題を多く残している。さらに学習者間の個人差が教室内での指導にも影響を与えている。ゆえに新しい日本語教授法を探り、また各学習者の状況にあった学習機会の提供や有意義なコミュニケーションをはかる学習の場、コミュニティの構築を考慮したコースを開発する必要性がある。このコースの中心は、アメリカと日本の大学間におけるグローバル・コラボレーティブ言語学習プロジェクトである。テクノロジーを用い両国の学習者が共同のプロジェクトに取り組むという学習法である。その一つである「Global Collaborative Presentation」とは、両国から2名で4人組のチームを形成し、各チームが選んだトピックを両国の社会的文化背景の視点を取り入れ比較対照し、Google Slidesを用いて15分間のプレゼンテーションを作るプロジェクトである。地理的な問題を超え、日本語学習者は同世代の日本人学生と直接交流しながら、異文化間の適正能力やコミュニケーション力を伸ばすことができる。この文化相互間のアプローチは学習者の興味と認知過程に働きかけ発話力や書く能力における言語力、自動性の発達を助長するとともに、学習者としての自己の責任を促し、さらに内発的なモチベーションを高めることが期待できる。

 

Learning Japanese through films as “Project-based Language Learning” approach

「作業中心の学習」で取り組む映像作品利用の日本語教育

Naoko Takei

Simon Fraser University

インターネットの浸透により、世界のどこからでもアクセスできるようになった日本の映画、ドラマ、アニメ等は、日本語学習の動機として挙げられることが定着してきた。そのような現実を踏まえ、映像作品の学習ツールとしての利用は、「映画 ・アニメ・ マンガ—日本語教育の映像素材—」(2006)と題するシンポジウムに代表されるよう、日本語教師の間で真剣に取り組まれてきた。また、映像作品利用の効果や問題点について書かれた論文も少なくない。本発表も、そのような映像作品を利用して行った、大学の中級レベルの授業の報告である。ただし、新たな試みとして、従来教師が準備する映画紹介、新出単語、内容理解の質問、ディスカッションのテーマを学習者に課すという、Project –based language learning (PBLL)のアプローチで取り組んだ成果に焦点を当てる。PBLLの最終段階として、映画の内容理解、ディスカションから学んだ内容を生かしてグループでスキットを考えビデオとして製作すること課題の中に入れた。映像作品利用の利点として、生きた日本語の紹介や日本文化の理解に役立つなどが挙げられているが、つまり有効なinput resourceとして扱われることが多い。それに対して今回のPBLLのアプローチでは、ビデオ製作というoutput resourceに繋げていくことを試みた。 本発表では、コース終了後の学習者の声をもとに、映像作品の利用をPBLLのアプローチで取り組んだカリキュラムの利点、問題点について報告する。また、この報告を通して、映像作品の学習ツールとしての有効性について、参加者と共に意見交換を行いたい。

 

An Analysis of Japanese Language Learner’s Filler

「ええと」「あのう」を使いたい理由

Yasuko Matsumoto

Harvard University

日本語学習者が使用する「ええと」「あのー」などのフィラーに関して、近年様々な研究が行われている。その評価については、フィラーの適切な使用は円滑なコミュニケーションを行う上で重要な方略の一つとして位置付けられており(大工原 2010)、初級・中級教科書では、より自然な日本語運用を目指すべく
(小林 2005)ダイアローグなどにフィラーが使用され、その使い方が紹介されている。しかしその一方で、発話と直接関係のないフィラーを流暢な発話を妨げる現象と捉え(伝・渡辺 2009)、フィラーの多用は発話内容の理解を困難にし、コミュニケーションに支障をきたしかねないという意見もある。先行研究では、教科書におけるフィラーの扱いの調査や、学習者のレベル別の使用フィラーの種類や頻度が調査され、授業での適切な導入が提案されている(大工原 2010)。
発表者が担当している中級日本語コースでは、フィラーを多用する学生が複数いることから、本研究は学生に焦点を当て、どうして学生が積極的にフィラーを使っているかという理由を探り、自身のスピーチをどのように評価しているかを調査することにより、今後の効果的なフィラー指導に役立てるという目的で行ったものである。

 

An individualized, content-based approach to college-level advanced Japanese

大学上級レベルでのCBIを使った個別学習の試み

Amy Snyder Ohta

University of Washington

This presentation describes a content-based intact multi-level 4th year university Japanese language course (n=19), I developed and taught using an individualized approach. Language skills widely vary in 4th year college courses, though a placement process excluded students whose proficiency was too high to benefit from the course. Students expressed high satisfaction with the course content and individualization.

The course topic, “Language Minorities in Japan,” considered different language minority groups including dialect speakers, Okinawans, the Deaf, Japanese-Brazilians, and Koreans. Instruction with authentic materials and occasional use of materials made for the course, was delivered in class and via a course-management system.

In-class student-student work focused on re-viewing/re-reading and discussing homework texts, or working with new video/reading materials, with students working in similarly-skilled pairs where possible, to promote individualization. Student-student work was facilitated by teacher-fronted introductions, demonstrations, vocabulary exercises, short lecture, reading aloud, and student oral summaries of their activities.

Homework was submitted online. Assignments included a video or written text. Students determined how much material to read/view, and how to learn Japanese from the material, submitting written work for each assignment, along with an oral response. Students also were expected to meet once a week outside class with a language partner to discuss class materials. Homework quantity (but not frequency) was student-managed, with 5 hours per week of out-of-class work as a target. Individual exams were created from weekly 20-word/expression vocabulary grids that students submitted. Students also did a final project, orally presented in small groups.

Students reported that: 1) they experienced reduced language anxiety, 2) individualized test content promoted vocabulary and kanji development, 3) extensive student-student work increased fluency and vocabulary, and 4) reading at home and in class promoted reading development. Many said they had never before spoken so much Japanese.

 

Learning Japanese through projects: Curriculum revision of the Second Language Japanese courses

プロジェクトを通しての言語学習――日本語二年生におけるプログラム改訂の試み

Kyoko Chen Sato; Mayumi Mochizuki Mckee; Minori Inada; Rie Maruyama

University of California, San Diego

近年の外国語教育では言語学習を通して、批判的思考能力や協働など21世紀スキルの習得が重要視されている。コンテントベース(CBI)の授業はナショナルスタンダーズの5Cを統合でき、学習者により意義のあるインプットを与え、発話を促進することができる。 (近松, 2009) また、CBIは学習者が新しい知識と既にある知識を繋げ、さらに深い学習を促進する。(Briton and Snow, 2017)

カリフォルニア大学サンディエゴ校の二年生では現在Theme-based Instruction(Briton and Snow, 2017)へのプログラムの改訂を行なっており、二年生のコースでは、教科書「ようこそ」を使いつつ、秋、冬、春、それぞれの学期で教科書のトピックに関連した一つのテーマを選び(秋:日本旅行のプラン、冬:日本人留学生支援サイト、春:ポップカルチャーにおける価値観)、一学期を通してグループプロジェクトを完成させ、そのプロジェクトを通して、学習者が言語能力、21世紀スキルを習得することを目指す。 今回は秋学期の日本旅行のプランを中心に途中経過と今後の方向性などを報告したい。

 

Peer Feedback on Oral Proficiency Interview using an Authentic Japanese Job Interview Setting

口頭試験「日本の就職面接」のためのピア・フィードバック

Misuzu Kazama; Bosung Kim

University of British Columbia

過去数十年間で、ピア・フィードバックは、学習者の文章作成能力を伸ばすために多くの外国語の授業で作文活動の過程として使用されてきた。ピア・フィードバックを課することの利点の一つには、学習者の外国語学習能力の自律性を高めることが挙げられる。作文活動の過程でピア・フィードバックが効果的であることは多くの研究で実証されてきたが、それを口頭試験で使われた実践の例は滅多にない。

本発表では、ピア・フィードバックを口頭試験準備過程に取り入れることによって話す能力の向上に繋がるのか、その実践と成果について議論する。この実践は、2017年春学期にブリティッユ・コロンビア大学の初級日本語二年目のコース(教科書「げんきII」後半使用)で行われ、昨年の実践からの改善点を取り入れ、今年もまた同じコースで更なる実践に取り組む。口頭試験の課題は「就職面接」で、卒業後この面接の練習が役立つようにと、実際にある日本企業や組織のリストから興味のあるものを選んで応募する。同じ会社や組織を選んだ学生同士でペアになり、授業外で各々が面接練習を録音し、それをオンライン上でお互いにフィードバックを与える。ここで使用するのは、Collaborative Learning Annotation System (CLAS) というオンライン録音教材で、録音の所々に音声または文字でコメントを入れることができる。このように話す練習をオンライン上で学生同士がフィードバック与え合い、本番の教師との口頭試験(就職面接)に備える。

今年の実践では、自分のペースで自己・ピアへの評価ができるようになったため、内容だけでなく言語運用能力の面でも更なる向上が見られることと考察を加える。


If you have any questions, please contact Izumi Matsuda-Kiami at matsuda@uw.edu with “NWCJP” in the subject line.